「山頂は暴風で真っ白だったよ」

ひとりぼっちでそこらへんをうろうろ拠点は山口県

満たされない気持ちはどうしようもないから隠して

秋穂

満たされませんね。

満たされてますか?

満たされている人なんているんだろうか。

満たされないから、ちょっと散歩をした土曜日の午後。秋穂の臼美歩道。

 

きっと満たされていないのであろうおじさんがいる。名前は何にしようか。うん、カーネル...ハーランドとしよう。ハーランドはいつもお菓子を食べている。お菓子を食べることが仕事のようだ。いつもいつもお菓子を食べている。わたしはそれが気になって仕方がない。ハーランドの席の近くに行くと、ガサガサ...ガサガサ...とお菓子の小袋を片付けるハーランドの姿が目に入る。

 

なんでそんなにお菓子を食べるのだろう。

 

きっとハーランドは今の仕事や自分の立場に満足していない。退屈なのだ。退屈そうだ。だからお菓子を食べる。満たされないからお菓子を食べる。それはわたしの想像に過ぎないのだけど。

 

ハーランドは退屈かもしれないけど、わたしたちは退屈ではない。次ぐから次へとやるべきことがやってくる。お菓子の小袋をガサガサする時間なんてない。お菓子を食べないわけではないけど。だからハーランドの姿が、わたしは異常に気になってしまう。

 

退屈なハーランドは、最近新たに仕事に関連した趣味道具を持ち込んだ。ちょっとワクワクしているハーランドの姿が視界の片隅に映った。嫌な感じだ。嫌な予感がする。ハーランドの趣味道具、確かにそれは遊び道具ではない。でもそれは今すぐに必要な道具ではない。そんなものをワクワクしながら触る時間がハーランドにはある。問題は、そんな時間はわたしたちにはないということだ。

 

満たされないが漏れ出てくるって、なんか嫌ね。

今日ハーランドは趣味道具を使っていた。のんびりと趣味道具を試していた。そして周囲の不快をかった。ハーランドには自分の役割が見えていない。自分の果たすべき役割をほっぽらかして、趣味道具で自分を満たそうとしてしまったハーランド。

 

満たされないのは誰もがそうだ。

そして満たされない原因のひとつは他者の関心や称賛の欠如だったりする。ハーランドに声をかけてあげればよかった。新たな趣味道具について聞いてあげたり、すごいですねと言ってあげればよかった。でもそういうのは面倒。わたしは「今はそんなことをする時間ではない」とハーランドに伝えた。

 

わたしは山を歩いても海を眺めても満たされはしない。

常に空白があって、さみしくて虚しくて孤独だ。満たされることはない。

 

満たされないのは仕方のないことだ。その空白があるから、わたしたちはその空白に何かを取り込もうと生きる。ハーランドは間違っていないけど、間違っている。お菓子や新しい趣味道具を取り込んで生きようとするのは別に構わないけど、その前にすごくつまらないやるべきことがハーランドにはある。それではハーランドの空白は全く埋まらないのだろうけど、やってくれ。

 

それが仕事なのだから。